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- 空間時間デザイナー
今でも忘れられないお客様がいます。
艶のある黒髪ボブが印象的で、凛とした佇まいから「仕事のできるキャリアウーマン」という言葉がぴったりな40代ほどの女性でした。
最初はダイニングテーブルをご覧になるためにご来店されましたが、ご提案を進める中で「お部屋全体もコーディネートしてほしいです」とお声をかけてくださいました。
ご自身の理想の暮らしやインテリアのイメージをしっかりと持っていらっしゃる方で、私の提案にも真剣に耳を傾けてくださるため、打ち合わせはとてもスムーズでした。私自身も好きなテイストだったこともあり、自然と会話が進み、気付けばお客様とスタッフという関係を超え、一人の人としてお話を楽しんでいるような感覚になっていました。
お話の中で、高校生のお子様がお二人いらっしゃること、そして反抗期の真っ最中で毎日奮闘していることを教えてくださいました。私自身も、母に反抗していたことを思い出しながら、
「これから高校、大学に進むにつれて、家族みんなでダイニングを囲む時間も少しずつ減っていきますよね。」
「次に家族が集まるのは、お子様がお相手を連れてきてくれる日かもしれませんね。」
そんな未来の話をしながら、一緒にダイニングセットを選びました。これまでは家具選びをご主人様と一緒にされていたそうですが、この日は「今回は私が決めるんです」とお一人で来店されていました。
その日はダイニングのご予約いただいてお帰りになりましたが後日、お嬢様と一緒に再来店してくださいました。その際に「リビングもお願いしたいです」とお声をかけていただきました。
ご家族みんなが自然と集まり、思い思いの過ごし方ができる空間を作りたい。そんなお話を伺いながら、私は迷わずNESSOソファをご提案しました。座る場所を選ばない自由さ、家族との程よい距離感、自然と人が集まるレイアウト。お客様の理想の暮らしにぴったり重なると感じたからです。コーディネートや使い方、価格にもご納得いただき、「じゃあこれでお願いします」とお言葉をいただいた時は、本当に嬉しく思いました。
ただ、その瞬間、一つだけ気になったことがありました。
「今回はご主人様はご一緒ではないのですか。」
関係性が築けていたからこそ、思い切ってお聞きすると、奥様は驚くほど穏やかな笑顔で答えてくださいました。
「実は主人、2か月前に亡くなったんです。」
その言葉を聞いた瞬間、何も言えませんでした。奥様は続けます。
「まだ主人が選んだ家具も服も、そのまま残っているんです。」
「キッチンに立つたび、ここにいつもいたなと思い出してしまって。」
「今の家に住み続けるのが本当に苦しくて。子供たちと新しい場所で、もう一度前を向いて生活を始めようと思ったんです。」
明るく話してくださいましたが、その一言一言の奥には計り知れない寂しさがありました。さらに笑いながら、
「遺骨もまだ納められてないのよ。」
とおっしゃた時、私は自然とこんな言葉を口にしていました。
「そんなにも愛せる人と出会えた奥様も、奥様にそこまで愛されたご主人様も、本当に幸せですね。」
すると奥様は優しく笑い、そこからは家具の話ではなく、ご主人様との思い出話をたくさん聞かせてくださいました。お二人が職場で出会われたこと、長い時間を共に過ごし、お互いを支えあってこられたこと。そして帰り際、奥様は笑顔で私にこう教えてくださいました。
「いい男の人ってね、優しい人と、一生懸命仕事を頑張る人よ。」
あの日、私は家具を提案していたはずなのに、お客様から教えていただいたのは、人を愛することの尊さや、人生を共に歩むことの温かさでした。
家具は、ただ生活を送るためのものではありません。
家族との時間を刻み、思い出を残し、時には新しい人生を歩き出すきっかけになるものです。
この接客を通して私は、デザイナーとは家具を提案する人ではなく、お客様一人ひとりの人生や想いに寄り添い、その理想の暮らしを形にする存在なのだ改めて実感しました。



